自動車のN(何となく)V(Variableな)H(はなし)

自動車力学、振動騒音について一緒に学んで行けるようなブログです。

【第6回】振動計測に欠かせない!? 窓関数編

今回から振動計測をするものには欠かせないものについてシリーズを不定期で更新して行こうと思います。

 

この世界に踏み入った時にまず真っ先に意味不明・理解不能だったのは

FFTとかFRFとかのアルファベット3文字だったので、そこから説明したいのですが

まだ追いついていないところがあので、一旦横に置いておきます。

今回は”あえて”窓関数です。

 

1. 窓関数とは

窓関数とは”より正確にFFTするために計測したデータを加工をしてくれるツール”

みたいなものです。

細かいリーケージ誤差がどうこうとかはちょっとググればわかり易いサイトがあるのでこちらにお任せします。

オリックス・レンテック | フーリエ変換と窓関数 - 計測器・測定器玉手箱 | ORIX Rentec Corporation

本サイトでは、現場で窓関数に出会った時に遭遇する”どの窓関数を選べばいいの?”

に少しでもお力になれるようなことを説明していきます。

 

2. 窓関数の種類

・レクタンギュラ

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図1. レクタンギュラ窓(出典:オリックスレンテック)

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図2.レクタンギュラ窓のスペクトル

レクタンギュラ窓は方形窓とも呼ばれ、図1のように取り込み開始から終了まで特に加工せずFFTする窓関数のことです。

加工しないのでuniformと読んでいる測定器メーカーもあります。

 

特徴としては中心の”メインローブ”から大きく離れた周波数でも20〜30dBほどしかレベルが減衰していないことから(図2)も信号の大小を分けることが苦手です。

漏れが生じてしまうので実働波とかでは使うことはなく、ハンマリング試験のようなインパルス入力を測定する時によく使います。

・ハニング

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図3. ハニング窓

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図4. ハニング窓のスペクトラム(出典:オリックスレンテック)

ハニング窓はハンさんという方が作ったためハン窓と読んでいる人もいます。

ハニング窓は図3をみてわかるように両端が”0”であるためリーケージ誤差は発生しません。

ただ、本来なら取り込まれるはずのデータが削られているので。レベルは元の信号より小さくなります。

また、比較的メインローブと近接したところのレベルは減衰していないので、元の信号の周波数が近い場合は苦手です。

実働波などリーケージなどを気にしないといけない時にしようしています。

 

ここまで説明した二つの窓でほぼ賄えるという噂も流れているので

ここからはおまけで知っておこうくらいの感じでOKだと思います。

・ハミング

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図5. ハミング窓

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図6.ハミング窓のスペクトラム(出典:オリックスレンテック)

ハミング窓はハニング窓と言葉も形も似ていますが、違いとしては開始点と終了点が0で終わっていないことです。

この影響で結果のレベルが異なりますので、計測の際にはハニング窓との混同に注意しないといけません。

ハミング窓の特徴としては、先ほどのハニング窓が苦手であったメインローブの近傍のレベルが低い点です。

その点はハニング窓より良いのですが、離れた周波数までレベルが減衰していない点が欠点です。


・ブラックマン

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図7. ブラックマン窓のスペクトラム(出典:オリックスレンテック)

ブラックマン窓はサイドローブの減衰は急峻で良いので、レベルの大小を分けるのは得意です。

しかし、メインローブの幅が広いので、近い周波数を一つのスペクトラムにしてしまう可能性があります。

正直、使ったことがなく初めて聞きましたレベルです。

オリックスレンテックさんありがとうございます。

・フラットトップ

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図8. フラットトップ窓(出典:オリックスレンテック)

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図9. フラットトップ窓スペクトラム(出典:オリックスレンテック)

フラットトップという名前から間違え易いですが、スペクトラムのトップがフラットという意味です。

計測したい信号がの周波数と取り込み区間がズレてもレベルの誤差は小さいので

定常波の計測等に向いています。

・フォース

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図9. フォース窓(出典:第二章 振動測定技術)

フォース窓は解析区間のみのデータを有効にしそのほかの区間を0にするものです。

区間外は0になるので元のパワーレベルが小さくなることに注意する。

・指数

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図10. 指数窓

一般的にハンマリングのような過渡信号を入力した後、振動は指数関数的に減衰する。

この時信号がフレーム内で収まらないとリーケージ誤差を引き起こすそこで、一定の比率で減衰していく窓で強制的に0にする。

ピークに歪みが生じるため注意が必要です。

 

 

 

【第5回】自動車のNVH ”ビリビリ感”

今回はいよいよラスト!

”ビリビリ感”についてです。

これにて官能トレーニングで感じた4つの乗り心地

”ヒョコ” ”ブル” ”ゴツ” ”ビリ”について一旦完了とします。

では早速、、、

1. ”ビリビリ感”の周波数は?

”ビリビリ感”の周波数帯は25Hz〜40Hzです。
ただ、色々な論文や記事を読んでいると、この周波数帯にはバラツキがあります。

どうやら研究者や企業、組織によって違っているので、仲間内で共有しているものがあるようです。

官能の表現は大差ない印象ですが、周波数帯ははっきり決まってない感じがします。

何とまあFirst Rideのようなふわふわした着地ですこと。笑

2. 振動・騒音性能に影響する?

”ビリビリ感”と”ゴツゴツ感”は4つの乗り心地の中では高周波であり、車の振動や騒音に影響します。逆に、”ヒョコヒョコ感”と”ブルブル感”は低周波で操縦安定性に影響します。

これについてなぜそうなるか深いところまで理解できておりませんので、引き続き調査していきます。

今回は”ビリビリ感”の正体を探ることが目的なのでこの辺まででお許しください。

3. 共振系と加振源は?

共振系はバネ下です。

バネ下共振と言えば、”ゴツゴツ感”もバネ下です。

両者の違いはどこにあるのか。。。

おそらくですが、バネ下共振のモードの違いが乗り心地の違いになっているのだと考えています。

”ゴツゴツ感”についてはバネ下の上下(バウンス?)のようなモードだという記述は見つけたのですが、”ビリビリ感”がはっきりしません。

残るモードは前後・左右・各軸の回転方向なのですが、どうも決め手に欠けています。

こちらも引き続き調査です。

 

加振源は路面の小さな突起等で、その入力がフロアに伝わり、”ビリビリ感”となります。

4. ”ビリビリ感”ってどんな振動?

”ビリビリ感”をの定義がありましたので紹介します。

『シートの接している皮膚の近傍の組織が局所的に振動するような感覚』

(参考:加藤和人「定常振動によるシート状乗り心地の評価手法開発」)

 

堅苦しいですが、シートに接している部分だけ振動するような感覚です。

個人的ではありますが、官能トレーニングの際はシートの振動より、ダッシュボード近辺が”ビリビリ”していた感覚でした。

 

5. 終わりに

まだまだ4つの乗り心地について煮え切らない、腑に落ちていなことはたくさんありますので、日々精進して行こうと思います。

わからない = 伸び代!

伸び代いっぱいです!

 

【第4回】自動車のNVH ゴツゴツ

官能トレーニング第三弾

今週は”ゴツゴツ”についてです。

1.ゴツゴツは深い!?

正直言うと今の段階で”ゴツゴツ”の原因(起振力と共振系)が何か分かっていません。。。これまで説明してきた”ヒョコヒョコと”ブルブル”は論文にさっと書いてありまとめるだけだったのですが、”ゴツゴツ”に関しては論文によって周波数帯が違ったり、共振系が違ったり、最後まで分かりませんでした。なので、分かったことを書いていくスタイルにします。”ゴツゴツ”深すぎます。

2.”ゴツゴツ”はハーシュネス!?

前回の記事でも取り上げています竹原伸氏の 論文

自動車サスペンション制御と電動パワーステアリング制御に関する研究https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2532&item_no=1&attribute_id=14&file_no=1

では”ごつごつ”はSecondary Rideに分類され、ハーシュネスと記されています。

ここで少し脱線しますが、ハーシュネスとは高速道路の継ぎ目のような突起を自動車が乗り越した時の振動現象のことです。

そして、僕は「ふむふむ、ゴツゴツ感はハーシュネスなのか」と早合点し、ハーシュネスについて色々調べはじめました。

調べていく中で、どこか何となくハーシュネスではない気がしてきました。

なぜなら1)官能トレーニングで感じた振動は過渡的なものではなかったから

2)ハーシュネスと言われる振動の周波数は45~55Hz付近でありトレーニングで感じた”ゴツゴツ”は20Hz付近だったからです。

3.経験者は語る。最後の頼みは経験者なのだ

疑問点の解決がされぬまま、にっちもさっちも行かなくなりましたので、ベテラン技術者に聞きました。

師 『”ゴツゴツ”はバネ下だよ』

僕 『? バネ下は”ブルブル”じゃないんですか?』

師 『バネ下にが持っている共振モードは一つしかないのかい?』

僕 『なるほど、モードが違うのか。納得。』

  『ちなみにどんなモードなのですか?』

師 『”ブルブル”が前後、”ゴツゴツ”が上下だよ』

僕 『ありがとうございます!解決しました!』

そういって勢いよく早合点して去っていくのが私の悪い癖です。

”なぜバネ下前後の共振が低いのか、マス(質量)は同じだから剛性が低いのか?だとしたら何で前後の方が低いのか?”

といった疑問が後のなってふつふつと湧いてきました。

ただ、やはり経験し、大きな壁を超えてきた先輩には頭が上がりません。

感謝感謝です。

4.あとがき

とはいえスッキリしておりませんので、引き続きアンテナを張り巡らせて行きますが、いったん”ゴツゴツ”はここまでとし、来週は”ビリビリ”について学んで行こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

【第3回】自動車のNVH ヒョコヒョコ

前回、官能トレーニングで感じた”ヒョコ”、”ブル”、”ゴツ”、”ビリ”の中から

ブルブル感についてまとめました。ブルブル感の正体はバネ下共振と言われるものなのですが、詳しくは下記の参照お願いします。

 

automotive-nvh.hatenadiary.com

 

 また、この擬音は周波数順になっており”ヒョコ”がもっとも周波数が低く、”ビリ”が高周波ということです。高周波と言っても25~30くらいですが。。。

 前回飛ばした”ヒョコ”を今回勉強して、低周波側はマスターです。

1.ヒョコヒョコはフワフワ感

 ヒョコヒョコについて調べるのは少し苦戦しました。というのもヒョコヒョコと表現している論文などが見つからなかった為です。ここで思ったのですが、ヒョコヒョコは官能トレーニング指導者とその周辺の独自すぎる表現なのでは?ということを。

結果、おそらくフワフワ感のことなのだろうという結果に着地しました。周波数帯も近いし。。。

 

2.フワフワ感の正体はバネ上の低周波振動

 例によって見出しでネタバレなのですが、フワフワ感と表現される低周波(1Hz付近)の振動はバネ上(コイルバネより上に乗っているボデーなど)の共振が原因です。

 

 このバネ上の共振による振動はPrimary Rideとも呼ばれており、主にサスをバネとしたボデーの剛体モード(バウンス、ロール、ピッチ)である為、乗員はボデーの揺れと感じます。個人的にはすごく車酔いしそうだと感じました。

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ボデーの剛体モード

 

3.PrimaryがあればSecondaryもある。

 バネ上低周波の振動がPrimary RideならSecondary Rideと呼ばれる振動もあります。

Secondary Rideはバネ上よりも高周波の振動で突き上げ感やブルブル感、ゴツゴツ感などを指します(参考文献によるとこれらの表現は一般的ではないようです)。乗員は振動やハーシュネス(突起乗り越し)を感じるようです。

 

 参考までに表作成しました。突き上げ感とゴツゴツ感については知見が不足していますので、()付けで表現してます。

 

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各周波数帯における乗り心地の表現とその共振源について

 

4.あとがき

 今回で”ヒョコ”、”ブル”の正体が判明下ので残り2回で”ゴツ”と”ビリ”について学んでいけたらと思います。”ごつ”ちょくちょく出てきているので検討はつくのですが、

”ビリ”は全く見かけないんですよね〜。これまた独自の表現なのかもです。

 今回の内容はほぼ下記参考文献の内容(しかも前半部分)なので、そっちを見た方がいいかも知れません。。。

 

参考文献

「自動車サスペンション制御と電動パワーステアリング制御に関する研究」

                           著者:竹原 伸

https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=2532&item_no=1&attribute_id=14&file_no=1

 

【第2回】自動車のNVH ブルブル

1.乗り心地の表現”ヒョコ・ブル・ゴツ・ビリ”

 先日、仕事の関係で自動車の官能評価をトレーニングする機会に恵まれた。

そのトレーニングの内容とは”ヒョコ・ブル・ゴツ・ビリ”を感じ分けようというもの。

そもそもその”ヒョコ”とか”ブル”とか言った変な擬音はなんなのか?

 

 上記は全て、自動車の振動を表す言葉であり、単発ではなく、周期的に繰り返される振動を擬音で表現したものだ。ここからは筆者の推測だが、その擬音は自動車の振動・乗り心地をみんなが共感できる表現に一般化したものであると考えている。

乗り心地というのは各個人がいろんな表現で表すことが出来てしまうため、バラバラな表現を使っていては話が進まないためであろう。

 

 そんなことはおいておいて、30分と短いトレーニング時間であったがこんな感覚の鈍い筆者でもある程度感じ分けることが出来た。

そこでふと、どこが振動げんなんだ?という疑問が生まれた。パワープラントか?ボデーか?はたまたサスペンション か?

 

 分からないなら調べて見ようというのが今回の内容となっている。

ほんとは”ヒョコ”から見ていきたかったが、先に見つかったのが”ブル”だったため順番が違うことはご容赦いただきたい。

 

2.ブルブルする4輪

 見出しからネタバレのようだか、"ブル"と言われる振動の大元はタイヤのようだ。

厳密にはサスペンションのバネとタイヤの質量が1自由度の振動系となって10Hz付近に共振周波数が存在している。そしてタイヤが路面からの入力やタイヤ自体のアンバランスによって加振され、車室内の運転手に伝わる。

 筆者の感覚としては足の裏にフロアの振動を強く感じ、感じ分け易かった。

 

3.減衰をあげて抑え込もう

 タイヤの振動は強制変位入力としてショックアブソーバー下端に作用するのでショックアブソーバの減衰を上げて、その振幅を抑え込むことが有効であるそう。

 また、エンジンとエンジンマウントの系の共振周波数も大体10Hz前後にあるため、

エンジンとエンジンマウントの系をダイナミックダンパーとして機能させることも設計的には可能である。

 

4.あとがき

図も無く、絵も無く、前振りが大半を占めるというなんとも伝わりにくい記事をここまで読んで頂いき、ありがとうございます。忌憚なき意見を聞けたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第一回】更新頻度は週一回

はじめまして。

自動車業界に属している者です。

記念すべき当ブログ第一回は行動宣言です。

論文などから自動車について『そもそも何だっけ?』といった疑問に週一回答えていきます。

次回更新は2020/05/02です。