自動車のN(何となく)V(Variableな)H(はなし)

自動車力学、振動騒音について一緒に学んで行けるようなブログです。

【第13回】FR(後輪駆動)

皆さんは後輪駆動と聞いて何を思い浮かべますか?

おそらくスポーツカーとか走りに重点を置いた車といったイメージだと思います。

FFとの違いに迫っていけたらと思います。

1.なぜ走りがいいと感じるのか

カーブを曲がるとき、後輪を駆動させることでドリフトアウト(≒オーバーステア)し、

車体の自転運動をドライバーの意思で加速させることができ回頭性や旋回性に有利です。

これは後輪駆動ゆえになせる技であり、車体との一体感が走りがいいと言われる所以かもしれません。

また、FRが加速に有利とも言われています。

加速時にはどんな車も後ろに荷重がかかるため、駆動輪に乗っかるように荷重がかかり、接地圧が大きくなるFRのほうが引っ張らなくては行けないFFに比べ、有利です。

逆にブレーキングでは荷重は前にかかるため前軸負担重量の軽いFRは不利と言われています。

実際のところ前軸への重量配分も考えられているためほぼ問題になるようなレベルではないとのことですが、、、

 

FRと聞くとプロペラシャフトがエンジンから後輪に向かって伸びているため、

車室内にあるセンタートンネルが大きく空間としてはFFに比べ不利なイメージがありますが、

最近のFFには4WDが設定されているものも多く、大差はないようです。

ゆえにFFとFRで共用できる点が多かったりするのですね。

 

本日はこのへんで!!!

 

 

【第12回】FF(フロントエンジン・フロントドライブ)

今週はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)についてです。

いわゆる前輪駆動と呼ばれているもので量産車ほとんど、

特に大衆車に採用されています。

なぜ、これほどまでに覇権を握っているのか紐解いていきます。

 

1.FFのメリット

 採用するメーカーが多いということはそれだけFFにはメリットが多いということ。

 以下にそのメリットを記載します。

  1. 居住性
  2. 重量
  3. 燃費
  4. コスト

1.居住性

 FFは前輪部で駆動系や操舵系のシステムが完結しています。

 そのため、FRでは必要なプロペラシャフトが不要でフロアトンネルが不要です。

 またFRのように全長が長いほど燃費の面で不利になることもありません。

2.重量

 プロペラシャフトなどが不要のため重量を軽くすることができます。

3.燃費

 重量が軽いこと。 

 FRに比べ動力を伝えるエネルギーの3〜4%ほど少ない。

4.コスト

 プロペラシャフトやリアアスクルに取って代わる部品のコストが安い。

 

メリット盛りだくさん。採用しない理由がないくらいです。

 

2.デメリット

 デメリットは細かいことはたくさんあるらしいのですが、

 難しくて説明できないので理解できたやつを紹介します。

1.重量配分が偏っている。

 車両に対し前に重量が偏っているゆえ急発進、急加速でピッチングによる

 乗り心地の悪化が懸念されます。

 酔いやすいということでしょうかね。

 

3.おわりに

以上が今週の内容となってます。

毎週土曜日更新のはずなのですが、どうしても日付が変わってしまう今日この頃です。

以上、また来週!

【第11回】縁の下の力持ち。エンジンマウントの話

今日はNVHに欠かせない存在でもある縁の下の力持ち的な存在

エンジンマウントについて深堀りしていきたいと思います。

 

1. エンジンマウントの役割って?

エンジンマウントの役割は大きく分けて以下の4つです。

  • エンジンを支持する。
  • 振動を低減する。
  • 動きを規制する。
  • 衝突時には安全に壊れることで乗員を守る。

・エンジンを支持する。

 重さ200~300kgあるエンジンを支えること。動いていないときはもちろん、

どんな凸凹道でも支え続けなければなりません。

ただ支えていればいいのかというとそうではありません。

だからエンジンマウントにはゴムが使われているのです。

・振動を低減する。

エンジンは動力を生み出すために爆発を起こします。

その振動はエンジンからボデーに伝わり、車室内にいる乗員に不快な音や振動をかんじさせます。

そこで防振ゴムの出番です。

ゴムには”ばね”と”減衰”という性質があります。

ばねが柔らかければ振動を低減してくれます。

減衰が大きければ振動の収まりがよくなります。

だからゴムが使われているのですね。

・エンジンの動きを制限する。

車が急発進、急停止したとき、エンジンの動きを制限し他の部品との干渉を防ぐことも大事な役割です。

ただしどんな衝撃が入っても制限すればいいわけではないので、次の役割が必要となってきます。

・衝突時には安全に壊れることで乗員を守る。

車にはクラッシャブルゾーンといって衝突時の衝撃を吸収するために潰れてくれる空間があります。

エンジンが車室内の方向に飛んでこないようにするためエンジンマウントは壊れることも設計しなければならないのです。

エンジンマウントが壊れることでエンジン自体は車室を避けるように斜め下に落ちるようになっています。

 

以上がエンジンマウントの役割です。

ここでは液封マウントやアクティブ制御式のマウントに触れていませんが、

NVHには欠かせない仕組みなのでおいおい書ければと思います。

ではまた来週!

 

【第10回】架空の天井で乗り心地UP!?スカイフックダンパーの話

相反する”フラットな走り”と”なめらかな走り”を高次元で両立させるためにはサスペンションの制御が欠かせない。

サスペンション制御の役割はそれだけに留まらず、車高の最適化も担っている。具体的には乗員の数や積載量で車高を変えないこと、高速走行では低く、荒れた路面などでは高くするなどである。

そこで今回はサスペンション制御の基本ともなっているカーノップ氏が提案した

”スカイフック理論”について学んでいこう。

 

1.架空の天井でフラットな走り

スカイフック理論とは架空の天井と車両を仮想のダンパーでつなぎ、この減衰力を使って車両の上下運動を抑制しようという考え方である。

さらに仮想のダンパーの減衰力が無限大ならばフラットな走りが実現できる。

しかし、現実にはそんな仮想の天井や無限大のダンパーなどはないので、アクチュエータを使ってアクティブに制御することでこれを実現する。

 

a.通常のサスペンション

 通常のサスペンションは路面の凹凸に応じて車体も大きく上下動をする。

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b.スカイフック理論

架空の天井と減衰力無限大のスカイフックダンパーを組み合わせるとフラットな走りになる。

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c.アクティブ制御


理想のスカイフック理論をアクチュエータを制御することで実現。

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※画像の乱れはご愛嬌

 

2.まとめ

アクティブ制御は実現可能で究極の乗り心地を実現してくれそうです。

アウディA8にはさまざまなサスペンション制御が盛り込まれているらしいので

その極上の走りをいつか体感してみたと思う今日この頃です。

 

 

 

【第9回】サスペンションの役割

どーも、このブログも4月に始めてはや9週目。

たくさんのアクセスを頂きありがたい気持ちでいっぱいです。

 

では、今日のNVH(なんとなく価値のある話)はサスペンションです。

サスペンションは操縦安定性や振動、乗り心地を考える上で非常に重要なシステムですので基本的なところを抑えておきましょう。

 

1.サスペンションの役割って?

サスペンションのない車が存在していないことからもサスペンションがなくてはならない存在であることは明白です。

では、サスペンションはどんな重要な役割を担っているのか、フロントとリアに分けてそれぞれ見て行きましょう。

a) フロントサスペンション

  ① タイヤからの入力を吸収する役割

  ② 姿勢を維持する役割

  ③ 進行方向を決める役割

  ④ 路面情報をハンドルを通じてドライバーに伝える役割

  ⑤ タイヤの力を伝え車体を牽引する役割

 

  ①と②はリアと共通のであり、サスペンションの役割としてイメージしやすいか

  と思います。

  ③と④はステアリングと共同で担う役割で、ハンドル操作がない時の直進性能、

  操舵に応じた旋回性能やハンドルを通じて車の状態や路面情報をドライバーに

  伝えることはフロントサスペンションの重要な性能で、

  これらの役割をサスペンションの特性をチューニングし満たす必要がある。

  

b) リアサスペンション

        ⅰ FF車   

  ① タイヤからの入力を吸収する役割

  ② 姿勢を維持する役割

  ③ 操舵によるヨー運動を止め、進行方向を安定させる機能

   ①と②はフロントと共通の役割。

   ③はステアリングによって車を旋回させた時にリアタイヤに横力がかかる

   ことによって発生する車体のヨー運動を止める性能です。

   ヨー運動をただ止めれば良いのではなく、ドライバーが違和感を

   感じないようにチューニングする必要があります。

   

   

  ⅱ FR車

  ① タイヤからの入力を吸収する役割

  ② 姿勢を維持する役割

  ③ 操舵によるヨー運動を止め、進行方向を安定させる機能

  ④ タイヤの力を伝え車体を牽引する役割

   FF車に④が加わっただけであるが、駆動力による影響を最小化する必要がある。

   昨今のFR車は高性能車が多く、後輪操舵などの制御ユニットを搭載することも

  多く、室内を確保するためにユニットの搭載性も考慮することが重要です。  

2. まとめ

  サスペンションの形式は無数にあれど、どのサスペンションも担う役割は

  同じです。どの役割を最適化するかがメーカーの考え方が伺えるところなので、

  より知見を深めて行きたい今日この頃です。

 

今日の内容はこちらを参考にさせて頂きました。

https://www.amazon.co.jp/%E8%BB%8A%E4%B8%A1%E9%81%8B%E5%8B%95%E6%80%A7%E8%83%BD%E3%81%A8%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0-%E5%AE%87%E9%87%8E-%E9%AB%98%E6%98%8E/dp/4876873712/ref=pd_lpo_14_t_0/356-6805419-7735553?_encoding=UTF8&pd_rd_i=4876873712&pd_rd_r=98a4935b-2883-486e-9df6-f1a602e78c41&pd_rd_w=lP9fS&pd_rd_wg=qY5PM&pf_rd_p=4b55d259-ebf0-4306-905a-7762d1b93740&pf_rd_r=W92RZEX8DS14K2HS4HHT&psc=1&refRID=W92RZEX8DS14K2HS4HHT

【第8回】後輪操舵で快適、安全

今回は後輪操舵のお話。

1.後輪操舵

後輪操舵(4WS)とは前輪の操舵に応じて後輪も操舵させましょうという構造のことだある。

一般的にはハンドルを切れば前輪のタイヤのみがハンドルの操舵角に応じて進行方向へ向いてくれる。

それを後輪も操舵させることで2つの利点が生まれる。

 

2.利便性向上

後輪操舵の第一メリットは利便性の向上だ。

後輪に前輪と逆相の操舵角をつけることでオーバーステアになり最小回転半径が

小さくなる。

つまり小回りが効くようになる。

その効果は後輪を5°操舵させると半径が約80cm小さくなるほどである。

ただ、このままでは高速走行時にスリップしやすくなってしまう。

だから高速走行時は後輪を同相に操舵し、アンダーステアにすることで車体を安定させる。

それなら後輪の角度を大きくしたらすごく利便性が向上するかというとそうでもない。

人間は違和感を感じる。

メーカーは20~60km/hの中速域では後輪操舵させず。それ以上の車速から徐々に角度をつけていくような制御をしているら

技術的には、真横に移動し、縦列駐車もお茶の子さいさいである。

ただ前後輪を90°転舵させるのはあまり現実的ではないかもしれないが。。。

しい。

3.緊急回避性能向上

2つ目のメリットは急ハンドルをした時に後輪を同相に転舵させることで車体を安定させることができることだ。

後輪を操舵させないと、車のお尻が大きく振れ、車体が安定せず、スリップしてしまうこともある。

そもそもでいうと適切な速度で走行し、急ハンドルしないことが1番いいのだが、

相手が横から飛び出してくることはこちらからは制御できないことなので、

万が一に備えるためにも必要な機能だと感じる。

 

 

【第7回】慣性特性でわかる!?メーカーさんの考え方

今週は慣性特性への理解を深めるて行きます。

そもそも慣性特性って?

慣性特性からなにがわかるの?

どうやって測定するの?

といったところにアプローチしていけたらと思います。

 

1.慣性特性って?

慣性特性とは次の3つの特性のことを総称しです。

まず"質量"、つまり重さです。

そして"重心位置"

最後に"慣性テンソル"です。

慣性テンソルとは"慣性主軸"と"主慣性モーメント"とのことで、慣性主軸とは物体が固有に持っている3つの直角に交わる軸で、物体独自のXYZ軸のようなイメージです。(いわゆるローカルな軸)

主慣性モーメントとは慣性主軸の各軸周りに対する周りにくさを表すものです。

慣性特性を調べることで、自動車メーカーのエンジン懸架の考え方などを調べることができたりします。

ちなみに、公園の遊具や、電動歯ブラシなど、身近なところで慣性特性は活かされているらしいです。

ちょっと親近感

2.慣性特性をどう活かすのか。それが問題だ。

さて慣性特性を調べてました。

ではこれ使ってなにができるの?

と思った方も多いと思います。

自動車では重心を知ることで運動性能に影響してきます。

まず重心位置を調べ、エンジンなどの重量物を重心の近くに配置する。

すると慣性モーメントが小さくなり、旋回性能が向上します。

一概に慣性モーメントが小さければいいというわけではないので、色々な車種の慣性特性を調べることでメーカーの考え方が分かります。

エンジンの懸架方式にも慣性特性は使われていて、

エンジンマウントをどこに配置するのか、

どこにおけばエンジンのロールに効果的か、その理想の位置におけるのか?(他の部品が邪魔するのならどっちをとるか)

など。

エンジンの慣性特性を調べることでメーカーの考え方が分かってきます。

考え方を知るには何を根拠に決めているのかをまず知らねばならないということですね。

3.測定方法

測定方法は主に以下の3種類です。


f:id:kx2n-oan-alleader:20200606214845j:image

(出展:特集「3分でわかる慣性特性のお話」 | 日本電計株式会社が運営する計測機器、試験機器の総合展示会

モード解析式での測定を行ったことがありますが、ハンマリングの精度と座標測定の正確さが求められます。

どの測定方法に関しても完璧でなく、

苦手なところはあるので、

何を測りたいのかで適切な方法を選ぶしかないですね。

 

以上、よろしくお願いします。